先日、骨盤に安定感があり、骨盤そのものがズレにくい力士は、膝や足首などにも負担がかかりにくくなるので、怪我に強くなり長く活躍ができるようにもなると云う話をしましたが、
例えば今年の初場所で優勝した玉鷲関や、40を過ぎても関取として土俵を湧かせている安美錦関などは、骨盤の安定性がある力士の典型例と言えるでしょう。
玉鷲関は初土俵から休場が一日もありませんし、安美錦関は満身創痍な印象ですが、怪我をしてもそのたびに這い上がってきて、関取の地位を維持し続けています。
これが骨盤にすぐズレが起きやすい力士だと、故障を抱えながら相撲の激しい稽古・取組を重ねていくうちに、怪我をさらに酷くしたり別の箇所を痛めてしまったりして、番付を大きく下げたり早い引退を余儀なくされたりするのです。

その代表例が、(個人的にはあまり好きな人物ではありませんが)三代目若乃花の花田虎上さんです。
彼は生まれた時、左の股関節が脱臼した状態だったそうです。
そのため子供の頃から股関節脱臼を起こしやすく、相撲でも左側から攻められると踏ん張りが利きませんでした。
そのために股関節以外にも両脚全体の負傷が常につきまとい、横綱に昇進して以降は優勝できず、成績も散々なものとなって29歳での引退へと繋がっていったのです。
彼が相撲を始めるのが遅かったら、柔道など他のスポーツをやっていてそこから転身していたら、角界入りまでに相撲のテクニックや勝負勘を磨いていなかったら、入門の後に実力をつけてゆくことなどままならず、激しい稽古に骨盤や股関節は耐え切れなくなってあちこちの負傷をもっと早い段階で招き、横綱どころか幕内に上がれていたかどうかも怪しいものがあります。
いずれにせよこの先天性股関節脱臼というのも、骨盤のズレを起こしやすくする原因の一つであり、その結果身体のあちこちを痛めやすくもするものなのですが、そのお話は、また、別の機会と云うことで。